浴室の目地に使われているのは、ゴムのように弾力のある材料です。 タイルとタイル、浴槽と床のように、動きやすい部材のあいだを埋めています。
この材料は表面だけが汚れるのではありません。 黒ずみが材料の内部まで進むと、洗っても削っても色は戻りません。 そこで、古いものを取り除いて新しく打ち直す「打ち替え」を行います。
洗って落ちるか、落ちないかを先に見分ける
打ち替えは、材料を取り除く作業が半分を占めます。 落ちる汚れなら、そこまでする必要はありません。
黒い点が目地の表面にあるだけなら、浴室用の洗剤で落ちることがあります。 LIXIL は浴室のお手入れについて、洗剤の種類ごとに使える場所を分けて案内しています。 とくに、塩素系のものと酸性タイプのものを混ぜると有毒なガスが出ます。 片方を使ったあと、続けてもう片方を使う場合も同じです。
洗っても色が変わらない、目地の内側から黒く見える、 という状態であれば、材料そのものに入り込んでいると考えられます。
材料は二種類ある。違いは「塗装できるか」
売り場には、見た目のよく似たチューブが並んでいます。 シリコーン系と、変成シリコーン系です。
セメダインは両者の違いを次のように説明しています。
変成シリコーン系は塗料がのり、シリコーン系は塗料がのらない点が、最も大きな違い
そのうえで、使い分けをこう書いています。
耐水性に優れるため、浴室や水に浸かる箇所に使われます
つまり浴室ならシリコーン系が基本です。 外壁のように、あとから塗装する場所では変成シリコーン系が使われます。
ここを取り違えると、あとで困ります。 シリコーン系を打った場所には塗料がのりません。 同社は家庭用の質問にも、シリコーンシーラントの上には塗装できないと答えています。
浴室の目地を塗装することはまずありませんが、 洗面台の裏や窓枠のように「いずれ塗るかもしれない」場所では、 先に確かめておいたほうが安全です。
色を選ぶときに、防カビ剤の有無を見る
浴室用のシーリング材には、カビを抑える薬剤が入っているものがあります。 ただし、すべての色に入っているわけではありません。
セメダインのバスコークNの製品情報では、 透明タイプと黒には防カビ剤が入っていないと書かれています。
色は仕上がりの見た目で選びがちですが、 浴室では防カビ剤の有無のほうが、後々の手間に効きます。 製品ページの成分や特長の欄を、色ごとに確認してください。
打ち替えの手順
メーカーが示している流れは、次のとおりです。
- 古いシーリング材を取り除き、面を清掃して乾かす
- 目地の両側にマスキングテープを貼る
- ノズルを、隙間より少し大きめに切ってチューブに取り付ける
- 奥まで届くように充填する
- 付属のヘラでならし、テープをはがす
- 24時間以上おいてから使う
うまくいくかどうかは、1 と 2 でほぼ決まります。
古い材料が残っていると、新しい材料がそこに乗るだけで下地に付きません。 時間が経つとその境目からはがれます。 カッターナイフで両側に切り込みを入れ、帯状に引き抜くと取りやすくなります。
テープは、仕上げの線を決めるためのものです。 貼らずに打つと、はみ出した分を拭き取ることになりますが、 硬化前のシリコーンは伸びるだけで、きれいには取れません。
打ち替えてよい箇所と、そうでない箇所
同じ「目地」に見えても、担っている役割が違います。
打ち替えの対象になるのは、部材どうしの隙間を埋めている箇所です。
- タイルとタイルのあいだ、タイルと浴槽のあいだ
- 洗い場の床と壁の立ち上がり
- 洗面台と壁のあいだ
一方で、次の箇所は目地の打ち替えでは扱えません。
- 浴槽や壁のパネルそのもののひび割れ
- 排水口まわりの部材の継ぎ目で、外し方が分からない箇所
- ユニットバスの部材どうしの接合部で、どこまでが目地か判断できない箇所
目地を打ち直しても、奥に回った水は止まりません。 壁や床を押すと柔らかい、目地の奥から水がしみ出す、といった状態は、 目地ではなく下地の側で起きていることなので、打ち替えの範囲を超えます。 集合住宅では階下に及ぶことがあるため、その時点で専門業者に見てもらってください。
使えない下地がある
シーリング材は、どんな面にも付くわけではありません。 バスコークNの製品情報は、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂などには 使用できないとしています。
浴室の部材は樹脂でできていることがあります。 洗い場のカウンターやカバー類が該当する場合、 同じチューブで続けて打つと、そこだけ後で浮きます。 迷ったら、その部材の取扱説明書か、住宅の設備の型番から確認してください。
換気を止めない
硬化のときに副生物が出ます。 製品情報にも、使用中と使用後の換気、火気に近づけないことが書かれています。
浴室は狭く、窓のない住まいもあります。 換気扇を回したまま、扉を少し開けて作業してください。 においが残るあいだは、そのまま換気を続けます。
賃貸で打ち替えてよいか
目地の打ち替えは、原状回復の観点では判断が分かれます。 元の色と違うものを打つと、退去時に指摘される場合があります。
壁の穴について 賃貸では直す前に確認することを書きましたが、 浴室の目地も同じで、手を動かす前に管理会社へ聞くほうが早い場面があります。 とくに、目地の劣化が建物側の原因によるものであれば、 借主が費用を負担しない可能性があります。
三つの区分
どこまで自分でやるか
- 目地の表面の汚れを、浴室用の洗剤で落とす
- 換気扇のフィルターの清掃
- タイル目地や浴槽まわりのシーリングの打ち替え(賃貸では事前確認が必要)
- 洗面台まわりの目地の打ち替え
- 目地の奥から水がしみ出している場合
- タイルや浴槽そのもののひび割れ
- 階下への漏水が疑われる場合
- ユニットバスの部材の継ぎ目で、範囲を判断できない場合
打ち替えないという選択
黒ずみが浅く、見た目が気にならないなら、そのままでも困りません。 シーリング材は水を止めるためのものなので、 色が変わっただけで機能が失われるわけではありません。
打ち替えを考えるのは、めくれてきた、隙間が空いた、 指で押すと動く、といった状態になってからでも遅くありません。
